【観光の学校特集】産官学連携で観光教育 東洋大学


森下教授

 東洋大学は昨年4月に「国際観光学部」を開設。既存の国際地域学部国際観光学科を発展的に改組した。

 東洋大学の観光教育の歴史は日本で最も古い。1963年、東洋大学短期大学に観光学科を創設。2001年に4年制の学科として、国際地域学部国際観光学科へと展開してきた。50余年の歴史を経て、学部に昇格した。

 訪日外国人旅行客の急増など日本の観光市場は国際化が進んでいる。国際観光学部では、産業と政策の両分野で即戦力となる実務能力を身に付け、観光立国・日本に貢献できる人材を育成する。

 国際観光学部の就学キャンパスは同大が本部を置く、東京都文京区の白山キャンパス。入学定員は366人。

 教育プログラムは2分野・5コースで構成。観光産業分野に「ツーリズムコース」「エグゼクティブマネジメントコース」「サービスコミュニケーションコース」「観光プロフェッショナルコース」の4コースを、観光政策分野に「観光政策コース」を設置している。

 ツーリズムコースは大手旅行会社、エグゼクティブマネジメントコースはホテルやブライダルのマネジメント職、サービスコミュニケーションコースは航空会社やホスピタリティ産業への就職を想定。働きながら観光学全般を視野に学びを深める観光プロフェッショナルコースでは、午後3時ごろから大学で学べる環境を用意している。観光政策コースは観光行政・DMOを目指す。

 今年は大学院国際観光学研究科国際観光学専攻に博士前期課程・博士後期課程を開設。研究分野の充実も見逃せない。

◇   ◇

 東洋大学は、社会人教育にも力を入れている。観光庁が実施する「産学連携による観光産業の中核人材育成・強化事業」には、昨年度に引き続き今年度も継続採択された。「ホスピタリティ産業における女性活躍と組織づくり講座」と題し、観光・ホスピタリティ産業で、総支配人や若女将などのマネジャー層や経営層を目指す女性や、女性の活躍の場を広げたいと考える企業の経営層、ホスピタリティ産業の関係者をターゲットとした講座を今年度も実施する。

 国際観光学科長の森下晶美教授に同事業の概要、昨年度の実施状況などを聞いた。

 ――事業の概要は。

 「観光庁が観光産業の中核を担う人材の育成・強化を目的に、社会人向け教育プログラムを実施する事業者を公募。東洋大学が6校のうちの1校として採択された。昨年10月から今年1月にかけて国際観光学部教員と観光・ホスピタリティ産業の各分野で活躍する実務講師による産学連携の講座を計13回開講した。講義やワークショップ、シンポジウムを通じて、日本の観光・ホスピタリティ産業における女性活躍の現状への理解を深め、女性が活躍できる組織づくりについて議論した」

 ――宿泊業で働く女性を対象とした講座なのか。

 「昨年度の受講者数は21人。内訳は、ほぼ男女半々だった。年齢層は30代半ばから50代くらい。都心のホテルのマネージャークラスが多かったが、山陰地方から通ってくれた旅館の若女将もいた。女性が活躍し得る組織を構築し、さらなる成長を模索するための講座なので、旅行業や男性も対象となっている」

 ――女性活躍に焦点をあてた理由は。

 「少子化が急速に進展している中で、働き手の急減を埋めるために多様な人材の積極的な活用が求められている。ところが女性の登用は遅れているのが現状だ。特に観光・ホスピタリティ産業では、労働者のうち女性が占める割合が多い一方で、管理職に就く割合は極めて低い。見方を変えれば、女性の管理職への登用の余地は大きい。食と住に深く関係するホスピタリティ産業では、女性の感性を取り入れることは重要だ」

 ――カリキュラムの概要は。

 「マーケティング、組織論から始め、旅行業界、葬祭業界、ブライダル業界、外資系ホテル、欧米先進国における女性活躍のケーススタディ、女性活躍が著しい先進的旅館での1泊2日研修、修了証授与式を兼ねたシンポジウムなどを行った」

 ――受講費用は。

 「観光庁からの受託事業なので、基本的に受講者の負担はない。旅館研修のみ実費を負担していただいた」

 ――本年度の受講者募集を7月から始める。東洋大学が本事業に注力する理由は。

 「本学創立者である井上円了先生の建学の精神の一つが『開かれた大学』。産官学連携活動として、広く社会人向け講座を積極的に開講してきた。また102年前に日本の私立大学として初めて女子の入学を許可するなど、男女共同参画についても伝統的に取り組んできている学校だ」

 「国際観光学部は、国際地域学部国際観光学科の時代から『理論と実践』の融合をミッションに掲げてきた。そのため、実業界出身の教員数が多いのも特徴だ。国際観光学部では、観光・ホスピタリティ産業界にこれから入る人材を育成しているわけだが、本事業では、現在業界に従事する人たちを将来の観光の中核を担う人材へと育成する。観光産業を日本の基幹産業の一つと位置付け、将来さらに高いレベルの観光立国を目指すために、本学、本学部も産官学連携活動で積極的に貢献していきたい」

森下教授

観光庁受託事業の社会人向け教育プログラム

http://www.toyo.ac.jp/nyushi/undergraduate/itm/

 

 


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